採用後すぐ辞める人の本音──入社3ヶ月以内に去る人が抱えていた5つの言えなかったこと
採用後の本音分析|退職時の表面的な理由ではなく、その下にある本当の不満を見る
本記事に登場する事例は、複数の実在ケースをもとに情報を改変・合成した架空のケーススタディです。特定の企業・人物を指すものではありません。
退職理由の「表面」と「本音」のギャップ
入社3ヶ月以内の早期退職者に「なぜ辞めるのか」と聞くと、多くの場合は当たり障りのない答えが返ってきます。「家庭の事情で」「キャリアの方向性を見直したい」「体調の都合で」──これらは退職面談の場で使われる定型句です。しかし、これらの言葉の下には、ほぼ必ず別の本音があります。
退職する側にとって、本音を正直に話すメリットはありません。お世話になった会社を批判したくない、人間関係を悪化させたくない、次の転職で不利になりたくない──こうした心理的ブレーキが、本音の発言を妨げます。結果として、経営者は「よくわからない理由で人が辞めていく」という状況に陥り、同じ失敗を繰り返します。
この記事では、複数の実在ケースを合成した架空A社のエピソードをもとに、早期退職者が口にしなかった5つの本音を構造化します。この本音を知ることで、次の採用・育成の設計が大きく変わります。
厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、労働者の入職率と離職率は依然として高水準で推移しており、特に入社初期の離職は中小企業の採用成果を大きく左右しています。本音を理解することは、データだけでは見えない定着施策の起点になります。
架空A社のケース──3ヶ月で辞めた若手社員の声
架空A社は、地方都市にある労働集約型サービス業の会社(従業員10〜50名規模)です。近年、複数の若手社員が入社3ヶ月以内に退職し、そのたびに経営者は「また家庭の事情か」「最近の若い子は続かない」という感想を持っていました。
しかし、退職から1年後、A社は外部のコンサルタントを入れて元退職者への匿名インタビューを実施しました。その結果、退職面談では語られなかった5つの本音が浮かび上がってきました。ここから先は、その5つの本音を、A社のエピソードを通して紹介していきます。なお、登場する数字・職種・時期等は匿名化のため抽象化・合成しています。
本音1:「求人票と現実が違う」
架空A社で最も多かった本音は、「入社前に聞いていた話と、入社後の現実が大きく違った」というものでした。
具体的にどこが違っていたのか
- 求人票の業務内容欄には「企画・提案業務」と書かれていたが、実際は大半がルーティン作業だった
- 年収レンジの上限に近い金額を期待していたが、実際は下限に近い金額だった
- 「残業はほとんどない」と聞いていたが、実際は月平均で相当な残業があった
- 「若手の意見が通る風通しの良い会社」と聞いていたが、実際は決裁プロセスが長く、意見が通る実感がなかった
なぜこのギャップが生まれるのか
A社の経営者は、求人票に嘘を書いているつもりはありませんでした。しかし、会社が「こうありたい」と思っている姿と、日々の現場の実態の間にはズレがありました。経営者は前者を、候補者は後者を見ます。このズレが、入社後の「話が違う」という本音を生み出していました。
この本音を潰すには、求人票を書く段階で現場の実態を正直に反映させることが必要です。求人票の書き方の型で解説した5ルール──特に「盛らない」「数字を具体化する」「悪い面も書く」──を守ることで、入社後のギャップは大幅に減らせます。
本音2:「誰に相談すれば良いかわからない」
A社の退職者インタビューで2番目に多かった本音は、「困った時に誰に相談すれば良いかわからなかった」というものでした。
相談できなかった3つの場面
- 業務でわからないことが出てきた時:先輩は忙しそうで声をかけづらく、直属の上司は現場に降りてこない
- 仕事のやり方に疑問を感じた時:「これは会社のルールなのか、個人のやり方なのか」が判断できない
- 人間関係で悩んだ時:人事もメンターも明確でなく、相談窓口が機能していない
なぜ相談窓口が機能しないのか
中小企業では、「困ったら誰かに聞け」という暗黙の文化があります。経営者や古参社員にとっては自然なことですが、新入社員にとっては「誰が適切な相手か」を判断すること自体が大きなストレスです。明確なメンター制度やOJT担当者の指定がないと、新入社員は孤立します。
この本音を潰すには、入社初日から3ヶ月間の『相談相手』を明確に指定する必要があります。メンター1名、業務OJT担当者1名、人事窓口1名──この3名を入社時に紹介し、それぞれの役割を明示するだけで、新入社員の孤立感は大きく減ります。
本音3:「評価されている実感がない」
A社で3番目に多かった本音は、「頑張っても評価されている実感が持てなかった」というものでした。
評価の実感がない3つの原因
- フィードバックが週1回もない:上司が忙しく、業務の結果に対するコメントが返ってこない
- 評価基準が曖昧:何を、どのレベルでやれば『できている』と認められるのかが不明瞭
- 評価面談が年1回:入社初期の3ヶ月は評価の機会が一度もない
なぜ早期の評価機会が重要なのか
入社初期の新入社員は、「自分はここで必要とされているのか」という不安を常に抱えています。この不安は、客観的なフィードバックや評価の言葉で初めて解消されます。フィードバックがないまま3ヶ月が経つと、新入社員は「ここにいる意味がない」という結論に辿り着きます。
この本音を潰すには、入社初月から週1回15分のミニ面談を設定することが効果的です。評価というより、「最近どう?」「困っていることはない?」と聞くだけで、新入社員の心理的安全性は大きく向上します。評価制度なき早期離職の構造の記事でも詳しく解説しています。
📋 あなたの会社の新入社員は、本音を言える環境にいますか?
- 入社初日から『誰に何を相談すれば良いか』が明確になっていますか?
- 週1回15分のミニ面談で、小さな違和感を吸い上げる仕組みがありますか?
- 3年後のキャリアパスを、新入社員に1枚の図で示せていますか?
1つでも『いいえ』なら、本音が育つ前に退職という結論に辿り着くリスクがあります。
本音4:「入社前に聞いていた話と違う」
A社の本音4は、本音1と似ていますが、より『面接や職場見学で聞いた話』に焦点を当てた内容です。
面接・選考プロセスで聞いた話と現実のズレ
- 面接官が「若手の成長を大事にする会社」と言っていたが、実際には研修制度がほぼなかった
- 「チームワークを重視する」と聞いていたが、実際は個人プレー中心の業務スタイルだった
- 「社長が現場に降りてくる」と聞いていたが、実際はほとんど現場に顔を出さなかった
- 「若手でも提案できる」と聞いていたが、実際は提案する場も時間も用意されていなかった
なぜ面接官と現場の間にズレがあるのか
中小企業では、面接官(経営者や人事)と現場が密接に連携していないことがあります。面接官が「こうあってほしい」と語ったことが、現場では実現されていないケースが多発します。このズレは、候補者が入社してから初めて気づく種類のものです。
この本音を潰すには、面接の場で語る内容を『現場で実現されていることだけ』に限定する必要があります。願望や方針を語る時は、「これから実現していきたい」と正直に伝え、候補者に期待値の線引きをしてもらうのが誠実な対応です。
本音5:「ここで3年後の自分が想像できない」
A社の退職者インタビューで5番目に多く、しかし最も深刻だった本音は、「ここで3年後の自分が想像できなかった」というものでした。
3年後が想像できない3つの理由
- キャリアパスが示されていない:何年後にどんな役割を担えるかの見取り図がない
- ロールモデルがいない:3年先を歩く先輩社員の姿が見えない、あるいは魅力的に映らない
- スキルの成長曲線が見えない:このまま働いても、市場価値が上がる実感がない
なぜこの本音が最も深刻なのか
前述の4つの本音は、「改善すれば解消できる」種類の問題です。しかし、この5つ目の本音は、会社の根本的な未来像に関わる問題です。3年後の自分が想像できない会社では、若手社員は短期間で去っていくしかありません。
この本音を潰すには、入社時に『3年後のキャリアパス』を1枚の図で示すことが効果的です。業務スキル・役割・年収・キャリア選択肢を3年後のマップにまとめ、新入社員が『ここで働く自分の未来』を具体的に想像できる状態を作ります。
本音が出る前に気づくための動画と面談の組み合わせ
早期退職者の本音は、退職面談の場ではなかなか出てきません。しかし、退職に至る前に本音を引き出す工夫は可能です。その鍵となるのが、採用段階からの情報の透明性と、入社後の定期的な対話の場です。
採用密着動画が早期退職を防ぐ理由
- 入社前の期待値調整:求人票や面接では伝えきれない現場の実態を、映像で正確に見せられる
- 役割モデルの可視化:3年先を歩く先輩社員の姿を、動画で候補者に見てもらえる
- 会社の弱みも含めた自己開示:良い面だけでなく、日々の苦労や葛藤も含めた正直な映像が、候補者の信頼を生む
採用密着動画は、「入社前のギャップを最小化する」ための最強のコンテンツです。文字や口頭の情報では必ずズレが生まれますが、映像は現場の空気そのものを伝えます。採用密着動画の活用ガイドで、制作から運用までの流れを解説しています。
さらに、入社後は週1回15分のミニ面談を3ヶ月間継続することで、本音が小さなうちに吸い上げられます。退職の決断に至る前に、小さな違和感を言葉にできる場があるかどうかが、早期離職を防ぐ最大のポイントです。
面談のやり方というより、退職者の立場で本音を話すメリットがないことが根本原因です。本音は退職後の匿名インタビューや、在職中の定期面談で少しずつ引き出す方が現実的です。退職面談で本音を無理に引き出そうとすると、むしろ関係が悪化するので避けた方が良いです。
その感覚は多くの経営者に共通しています。しかし、怖さを乗り越えて本音を聞くことでしか、次の採用・定着の改善はできません。最初は外部コンサルタントを通した匿名インタビューから始めるのが心理的負担も少なくおすすめです。
『誰が何を言ったか』ではなく『構造的な問題として何があったか』の粒度で共有してください。特定の上司や部署を責める形で共有すると、組織全体が萎縮します。『求人票と現実のギャップ』『相談窓口の不明瞭さ』といった構造の問題として語ることで、建設的な改善に繋がります。
最もレバレッジが高いのは『入社前の情報の透明性』と『入社初月の相談窓口』の2つです。求人票の見直し・現場実態を映像で伝えること・メンター制度の導入は、いずれも低コストで大きな効果が見込めます。大きな制度改革より、まず小さく始めるのが現実的です。
小規模企業だからこそ、キャリアパスを1枚の図にして見せやすい強みがあります。役職や組織の階層がないからこそ、『3年後にどんなスキルを持った人になる』『どんな仕事を任せる』という粒度で、個別具体的なマップを作れます。小さな会社の方が、個別対応の柔軟性があります。
多くの中小企業で共通する悩みです。最初から全社員に協力してもらう必要はなく、1〜2名の協力者から始めるのが現実的です。協力してくれた社員が映像で評価されることで、徐々に他の社員も協力的になるケースが多いです。段階的に広げていけば十分です。
早期退職の本音セルフチェック5項目
- チェック1:求人票に書かれた業務内容は、現場の実態を正直に反映していますか?
『こうありたい姿』ではなく『日々の現場の実態』が書かれているか確認してください。 - チェック2:新入社員が入社初日から『誰に相談すれば良いか』を明確に認識できていますか?
メンター・OJT担当者・人事窓口の3名が、入社時に紹介されているか確認してください。 - チェック3:入社初月から週1回15分のミニ面談を設定していますか?
評価ではなく『困り事のヒアリング』の場として機能しているか確認してください。 - チェック4:面接官が語る会社の良い面は、現場で実際に実現されていますか?
面接の言葉と現場の実態にズレがないか確認してください。 - チェック5:新入社員に『3年後の自分の姿』を具体的に示せていますか?
キャリアパス・スキル成長・ロールモデルが見える形で提示されているか確認してください。
まとめ:本音は「聞き出す」のではなく「気づける環境を作る」
早期退職者の本音は、退職の瞬間に正直に語られることはほぼありません。だからこそ、本音を「退職時に聞き出す」という発想から、「退職に至る前に小さな違和感を吸い上げる」という発想に切り替える必要があります。
架空A社のケースで見た5つの本音──求人票と現実のギャップ、相談窓口の不明瞭さ、評価の実感不足、面接と現場のズレ、3年後の未来像のなさ──は、どれも小さな改善の積み重ねで解消できるものです。大きな制度改革は必要ありません。求人票を正直に書く、メンターを明示する、週1の15分面談を始める、キャリアマップを1枚作る──この4つから始めるだけで、早期離職率は大きく変わります。
そして、これらの施策を支える最大の武器が採用密着動画です。動画で現場の実態を正確に伝えることで、入社後のギャップを最小化し、本音の不満が生まれる余地そのものを減らせます。本音を聞き出すのではなく、本音が生まれない採用・定着環境を作ること。それがFOKOが支援する中小企業の定着戦略です。
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